2014年3月27日木曜日

産前産後休業中の社会保険料免除_平成26年4月より

2014年12月12日 追記
協会けんぽより「産前産後期間計算ツール」が公開されていましたので、記事の途中にリンクを貼りました。
出産予定日・出産日を入力すると、産前産後の期間「産前42日(多胎98日)~産後56日がいつになるか」を求めることができます。


改正POINT

平成26年4月1日より、産休中の社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が免除されることとなりました。
※ここで言う産休とは… 出産の日(出産の日が出産予定日後であるときは、出産の予定日)以前42日(多胎妊娠のときは98日)から出産の日後56日の間の休業をいいます。 
産前42日、産後56日とは…産前6週間、産後8週間であり、労働基準法の規定により妊産婦の就業が制限される期間と同じです。


従来は…

女性の場合、産後8週間を経過した後から免除開始とされていました(産後8週間を経過し、3歳未満の子を養育する休業期間が保険料免除の対象。 → 育児休業中の保険料免除:日本年金機構WEBサイト)。


具体的な免除の方法

産前産後休業中の保険料免除は、次の期間を対象とし、会社・従業員の双方分が免除されます。
産前産後休業を開始した日の属する月からその産前産後休業が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間」に係るものの徴収は行わない。
免除される保険料
  • 健康保険料
  • 介護保険料
  • 厚生年金保険料

※雇用保険料について
雇用保険料は「賃金に雇用保険率を乗じて算出」するため、休業中に支払った賃金額が0円のときは、雇用保険料も0円となります。


2014年12月12日追記

産前産後休業期間の把握

産前産後休業期間計算ツール
↑リンク先は、出産日(および出産予定日)を入力すると、産前産後の休業期間と育児休業開始日を算出するものです。協会けんぽのWEBサイトにて公開されているものです。

産前産後期間一覧表(PDF)
↑こちらは、協会けんぽのWEBサイトにて公開されている産前産後期間一覧表です。


根拠条文

改正後の厚年法81条の2の2(官報p19下段
改正後の健保法159条の3(官報p26下段
※官報ページ番号は、各ページ上部に表示あり。


2013年6月12日追記

免除額・免除期間に関する注意点

保険料の免除は、日割り計算をせずに月単位で行います。
例えば、産休に入ったのが4月28日の場合でも、「産前産後休業を開始した日の属する月から」免除の対象となるため、4月分(1箇月分)の社会保険料の全額が免除となります。

また、社会保険の保険料控除には1箇月ズレが生じる点もお気をつけください。
例:「4月分」の保険料は、5月に支払う給与から控除となります。免除の対象となり保険料を徴収しないこととなるのも5月に支払う給与時からとなります(保険料控除に関する根拠規定:健保法167条、厚年法84条)。


免除の終了月には気をつけてください。
条文上は、産休が「終了する日の翌日が属する月の前月まで」を免除の対象としています。

簡単に述べると、産後休業(産後8週間)の終了日が
月の途中のとき…産休終了の前月までの分が免除される。
月の末日のとき…産休終了月までの分が免除される。

具体的な日付を入れて見ていくと、次のとおりになります。
  • 月の途中(例:6月15日)が産休終了日のときは、翌日(6/16)が属する月の前月まで、つまり「5月」までが保険料免除の対象。
  • 月の末日(例:6月30日)が産休終了日のときは、翌日(7/1)が属する月の前月まで、つまり「6月」までが保険料免除の対象。
6月の場合は、29日と30日に産後休業を終了した方では、たった1日の違いなのに保険料免除の終了月が異なってくるのです。

なお、月の途中で産休が終わる(産後8週間経過)ときは、産休終了月の前月まで保険料免除と記載しましたが、8週間経過後に引き続き育児休業を取得する場合は、「育児休業中の保険料免除(←日本年金機構WEB)」の適用を受け、保険料負担が免除されます。


2014年1月22日追記

免除の対象者

平成26年4月30日以降産前産後休業が終了となる被保険者が対象となります。

やや細かい内容になりますが、女性経営者も産前産後休業中の保険料免除対象となります。
  • 産前産後の休業期間中の免除…女性経営者も対象となる。
  • 産後8週間経過後の育児休業中の免除…女性経営者は対象外。

「産前産後休業中」と「育児休業中」で扱いが異なる理由
経営者は育児介護休業法に基づく育児休業等は取得できない(休むことはできますが、保険料免除の対象となる休業として扱われない)ため、社会保険の被保険者であっても、育児休業等期間中の保険料免除は受けられないのです。


2014年2月6日追記

手続き方法 

産前産後休業取得者申出書
産前産後休業期間中(産前42日・産後56日の間)に、年金事務所に提出します。
http://www.nenkin.go.jp/n/open_imgs/service/0000018131zo7isNeqBi.pdf3/27様式追加
日本年金機構の以下のサイトに、Excel版の書式および記入例があります。


産前産後休業取得者変更(終了)届
出産したとき…「出産予定日」と「出産日」が異なるときは提出します。「出産予定日」と「出産日」が同一のときは、提出は不要です。

休業終了時…当初申出した産休終了予定年月日より前に産休を終了した場合は提出します。(当初の終了予定日どおりに終了した場合は、提出は不要です)

手続きについては、当記事の後半にアップしたリーフレット(日本年金機構)に図入りで案内がありますので、そちらもご覧ください。


従来と異なる報酬額で職場復帰をしたとき

産後休業後に、従来と異なる報酬額で職場復帰をした場合は、産後休業終了日の翌日が属する月以後3月間の報酬を基に、標準報酬月額を改定します(考え方は、育児休業等終了後の改定と同様です。→ 育児休業終了時の改定:日本年金機構WEBサイト)。

改定に用いる報酬額
前述の通り、産後休業終了日の「翌日」が属する月以後3箇月の報酬を基に改定します。

簡単に述べると、産後休業(産後8週間)の終了日が
月の途中のとき…産休終了月以後3箇月の報酬を基に改定。
月の末日のとき…産休終了月の翌月以後3箇月の報酬を基に改定。

具体的な日付を入れて見ると、次のとおりになります。
  • 月の途中(例:6月10日)が産休終了日のときは、6月・7月・8月の報酬を用いる。
  • 月の末日(例:6月30日)が産休終了日のときは、7月・8月・9月の報酬を用いる。

随時改定との違いは、
  1. 固定給の変動がなくても産前産後休業後の改定は行われる
  2. 2等級以上の変動がなくても産前産後休業後の改定は行われる
  3. 報酬支払基礎日数17日未満の月があるときは、その月を除いて算定する(随時改定のときは、17日未満の月があるときは随時改定を行わない。)。
注)産後休業終了時の改定は、産休終了日の翌日が属する月以後3箇月の報酬を用いることとなりますが、前記3で触れたように報酬支払基礎日数が17日未満の月があるときは、その月を除いて算定します。

例えば、6月20日に復帰したときは「6月・7月・8月」の3箇月の報酬を基に改定しますが、6月の報酬支払基礎日数が10日分の場合は、6月の報酬は用いずに、「7月・8月」の2箇月に支払われた報酬の平均額を使って改定することとなるのです。

根拠条文
改正後の厚年法23条の3(官報p19上段
改正後の健保法43条の3(官報p26上段
※官報ページ番号は、各ページの上部に表示あり。


手続きに関する情報

日本年金機構の以下のページに、育休等に関連する情報がまとまっています。
該当しそうなものをご確認ください。
制度内容、手続き場所、様式、留意事項等が掲載されています。


資料編

http://www.nenkin.go.jp/n/data/service/000001674194EWe5gfHi.pdf

↑各種改正の内容が図表入りで掲載されているので、内容を把握するのであればお薦め。
↑改正の主な内容と施行日、各種資料や条文掲載

2014年3月25日火曜日

うつ病を発症後の解雇に関する判決

昨日(平成26年3月24日)、うつ病を発症後に解雇された労働者が損害賠償を求めた最高裁の判決がありました。

解雇無効の訴えは一、二審とも認め、すでに確定。
上告審の争点は賠償額となっていました。

判決では、高裁が賠償額を減額理由とした事情は「社員側の責めに帰すべきではない」と判断(東京高裁の判決を破棄)し、審理を同高裁に差し戻しました。
高裁では、会社が支払うべき額が上積みされる見通しです。

事件名等

解雇無効確認等請求事件
裁判年月日 平成26年03月24日
法廷名 最高裁判所第二小法廷
裁判種別 判決

判決要旨

労働者が過重な業務によって鬱病を発症し増悪させた場合において、使用者の安全配慮義務違反等を理由とする損害賠償の額を定めるに当たり、当該労働者が自らの精神的健康に関する情報を申告しなかったことをもって過失相殺をすることができないとされた事例

概要

  • 労働者は、液晶ディスプレイの製造ラインを構築するプロジェクトのリーダー
  • ープロジェクトへの従事中、休日に出勤することも多く、帰宅が午後11時を過ぎることも増えた。
参考:本件プロジェクトの立上げ後、4月まで間の法定時間外労働の状況(ここでは一部のみを抜粋しています。勤怠の状況や健康診断の受診状況などは、この記事の後半にリンクを貼った判決内容をご覧下さい。)
 平成12年12月…75時間06分
 平成13年 1月…64時間59分
 平成13年 2月…64時間32分
 平成13年 3月…84時間21分
 平成13年 4月…60時間33分
  • その後うつ病を発症
  • 平成15年1月:欠勤期間が就業規則の定める期間を超過したため休職発令
  • 定期的な上司との面談等を実施
  • 平成16年8月6日:休職期間の満了を理由とする解雇予告通知
  • 平成16年9月9日付け解雇

該当する判例検索(裁判所)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=84051&hanreiKbn=02

判決の内容(PDF)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140325085331.pdf