2013年7月1日月曜日

賞与を支払った月に退職した従業員の社会保険料

追記情報:2013年7月にアップして以来、読まれた方から「賞与支払届は提出する必要がありますか?」の問い合わせが数件寄せられていましたので、記事の後半に加筆しました(2014年1月28日追記)。

夏季賞与の支給を終えた会社、あるいはこれから支給する予定の会社も多いと思います。
賞与を支払った月に退職した社員がいたときは、退職の日付により保険料徴収の有無が異なるため注意を要します。


基本事項の確認:保険料徴収

社会保険(健保・介護・厚年)の保険料は、
徴収開始:資格取得月から徴収開始します(※1)。
徴収終了:資格喪失日(※2)のある月の前月まで徴収します
※1 社会保険料の控除は1月のズレがありますので要注意です。例えば、4月入社の場合、「4月分」の給与に対する社会保険料は、5月に支払う給与から控除します。
※2 社会保険では退職日の翌日のことを「資格喪失日」といいます。
※3 取得と喪失が同月にあるときは1か月分の保険料が徴収されます。


着目点

「資格喪失月の前月」までに支払われた賞与が社保料の徴収対象となるため、退職日が「月の途中」または「月末」のどちらであるかが着目点です。

図解の方が掴みやすいと思いますので、以下をご覧ください。

月の途中で退職したとき

賞与支払をした月の途中に退職日がある(=賞与支払月と資格喪失月が同じ)ときは、最終月に払われた賞与からは社会保険料が徴収されません
次の図では、青い線(5月)までに支払われた賞与が保険料徴収の対象となり、その後に払われた賞与は保険料徴収の対象とならないことを表示しています。
※本人負担、会社負担の両方とも発生せず。


月末に退職したとき

賞与支払月(以下の例では「6月」)の末日に退職したときは、賞与支払月の翌月(例「7月」)に資格喪失日があることとなります(「退職日の翌日」が「資格喪失日」とされているため)。
「資格喪失月の前月」までに支払われた賞与が社会保険料徴収の対象となりますので、以下の事例では6月に支払った賞与は保険料徴収の対象となります。


賞与を支払った後で退職の申出があったとき

賞与支払の時点で退職日が分かっているときは、退職予定日に応じて社会保険料を控除または控除なしの判断をしていきますが、賞与支払いをした後に「会社を辞めたい」と申出があったときの扱いについて触れていきますね。

【月末より前の日付(例6/25、6/29等)で退職のとき】
このときは退職月に払われた賞与にかかる社会保険料は発生しませんので、既に控除してしまった分を退職予定者に返還しなければなりません。

まれに、経理上の処理を担当される方から「年金事務所から請求があった金額と会社で計算している社会保険料額が一致しない」とのお話をいただくことがあります。
賞与支払月の退職者がいるときは差異の要因となっている可能性がありますので、退職者の有無や退職日を確認してみるとよいですよ。


【月末(例6/30、7/31等)で退職のとき】
この場合は、退職月に支払われた賞与も社保料徴収の対象となりますので、退職者に対する社会保険料の返還は発生しません


雇用保険料の扱い

雇用保険料の徴収に関しては、社会保険のように「喪失月の前月まで」に支払われたものを徴収対象とするルールはありません。
月の途中の退職、月末退職のいずれであっても、「賞与額×雇用保険率」により雇用保険料額を計算し、徴収します。
※今回の記事の中で触れている「社会保険料」は、健康保険料介護保険料厚生年金保険料を指しています。



2014年1月28日追記

賞与支払届について 

社会保険では、賞与を支払ったときに「賞与支払届」を提出することとされています。
資格喪失月に支払われた賞与は保険料徴収の対象にならないことについては前述の通りです。
それでは、「賞与支払届」はどのようにするか?について触れますね。
結論を先に述べると、保険料徴収の対象とならない者であっても、資格喪失日の前日までに支払われた賞与があるときは賞与支払届に氏名や賞与額を記載して提出をします。

保険料徴収の対象とならない者も賞与支払届を提出する理由は?
これは、賞与にかかる健康保険料の算出と関係があります。
年度(4月~翌年3月)の賞与累計額を算出し、累計額が540万円(注:平成28年4月以降は573万円)を超過する場合は、超過する賞与額に対し健康保険料は徴収なしとされます。

この「累計」は、退職し再就職をしたときも再就職先の保険者(健康保険を運営している「協会けんぽ」「○○健康保険組合」などを「保険者」と呼びます。)が同じであれば、合算をします。

このように、退職者についてもその後の再就職先で賞与が支給されたときに、年間の賞与累計額を算出することがあるため、保険料徴収がない場合であっても賞与支払届を提出するのです。

この取扱いは、退職だけではなく育休中等で保険料徴収を免除されている者についても同様で、育休中に賞与支払があったときは、保険料徴収がない場合であっても、賞与支払届には氏名や賞与額を記載して届出を行います。


参考