2013年6月19日水曜日

改正 障害者雇用促進法のご案内

平成25年7月4日追記
本文中にある「改正概要」のPDF資料は、当初国会提出時のものをアップしていましたが、厚労省WEBサイトにさらに情報を追加したものが公開されましたので、平成25年7月4日に差し替えました。


平成25年6月13日、国会で可決・成立した「障害者の雇用の促進等に関する法律」の改正法についてです。6月19日に改正法が公布されました。

改正法の施行は内容により段階的に行われ、法定雇用率の算定基礎に「精神障害者」を加える改正は、5年後{平成30(2018)年4月}からとなります。

改正法の官報、条文、通達


改正の概要

まずはポイントだけでも押さえておきたいという場合は、「改正概要」をご覧ください。
A4用紙4枚にまとまっているため主な改正点を掴みやすいです。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha_h25/dl/kaisei02.pdf 
↑当初国会提出時の改正概要を貼っていまたが、それより情報を追加されたものが公開されましたので、平成25年7月4日に差し替えました。

条文レベルでさらに細かく見ておきたい場合は、改正法のうち重要と思われる箇所を以下に取り上げましたのでご覧ください。
文字数が多く、読みにくいかもしれませんが青字で強調している箇所を追っていくだけでも、大事な点をおおむね把握できるのではないかと思います。
改正法の全条文を確認するときは、「平成25年6月19日 官報本文」、または下の方にリンクを貼った国会提出時の資料をご覧ください。

Ⅰ 障害者の権利に関する条約の批准に向けた対応
平成28年4月1日から。

(1)障害者に対する差別の禁止
雇用の分野における障害を理由とする差別的取扱いを禁止しました。
  1. 事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない。(法34条)
      
  2. 事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない(法35条)

(2)雇用の分野における均等な機会、待遇の確保等
事業主に、障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するため、障害の特性に配慮した必要な措置を講ずることを義務付けました。
ただし、当該措置が事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなる場合は除かれます(「過重な負担」がどのようなものかは指針で定める)。
  1. 事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。(法36条の2)
      
  2. 事業主は、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。(法36条の3)
      
  3. 事業主は、1.及び2.の措置を講ずるに当たっては、障害者の意向を十分に尊重しなければならない。(法36条の4,1項)
      
  4. 事業主は、2.の措置に関し、その雇用する障害者である労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。(法36条の4,2項)

(3)苦情の自主的解決・紛争解決援助・調停
  1. 不当な差別的取扱い[法35条:前記(1)2]、障害の特性に配慮した必要な措置[法36条の3:前記(2)2]に関し、障害者である労働者から苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関(事業主を代表する者及び当該事業所の労働者を代表する者を構成員とする当該事業所の労働者の苦情を処理するための機関。)に対し当該苦情の処理を委ねる等その自主的な解決を図るように努めなければならない。(法74条の4)
      
  2. 都道府県労働局長は、障害者に対する差別の禁止[法34条、35条:前記(1)]、障害者の特性に配慮した措置[法36条の2、36条の3:前記(2)1、2]についての紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。(法74条の6,1項)
      
  3. 事業主は、障害者である労働者が2.の援助を求めたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない (法74条の6,2)
      
  4. 調停都道府県労働局長は、差別的取扱いの禁止[法34条、35条:前記(1)]及び均等待遇の確保等[法36条の3:前記(2)2]についての紛争について、当該紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、紛争調整委員会に調停を行わせる。(法74条の7,1項)


Ⅱ 精神障害者を含む障害者雇用率の設定 重要
平成30年4月1日から。
  1. 対象障害者{身体障害者、知的障害者又は精神障害者(精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限る。)}である労働者の総数を算定の基礎とした障害者雇用率を設定し、事業主はその雇用する対象障害者である労働者の数がその雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数以上であるようにしなければならない。(法43条1項、2項)
      
  2. ただし、施行(平成30年)後5年間に限り、精神障害者を法定雇用率の算定基礎に加えることに伴う法定雇用率の引上げ分について、本来の計算式で算定した率よりも低くすることを可能とする。(附則4条)


Ⅲ その他
障害者の範囲の明確化その他の所要の措置を講ずることとされました。
※障害者の範囲の明確化については公布日(平成25年6月19日)から。次のアンダーラインの箇所が改正により追加された部分です。
  • 「障害者」とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。 )その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいうものとする。(法2条)

    なお、第2条の改正(アンダーライン部分の追加)の意図を、労働政策審議会障害者雇用分科会の議事録(平成25年3月21日)より引用します。
    障害者の定義規定の改正です。こちらは先般の障害者基本法の改正の表現に合わせて、法律の「障害者」のところに発達障害や難病に起因する障害が含まれることを明確にするため、精神障害の下に「(発達障害を含む)」と、「その他の心身の機能の障害」というものを明記するというものです。なお、これは改正の前後で障害者の範囲が変わるものではありません。


    改正の重要箇所の案内は以上です。
    今回の改正に関し、具体的なものはこれから指針(「差別の禁止に関する指針」「均等な機会の確保等に関する指針」において定めていくこととされています(法36条1項、法36条の5,1項)
    当informationにも掲載していきますので、今後の情報にお気をつけください。


    [参考]国会提出時(平成25年4月19日)の資料の一部

    さらに突っ込んで改正が行われるまでの審議内容などを知りたい、という場合は以下のリンク先にある議事録や平成25年3月21日の審議会資料(今回の改正が行われる直前のものです)をご確認ください。


    関連情報

    平成27年4月以降の改正(障害者雇用納付金制度の対象事業主の範囲を変更:労働者数100人超の企業へ)については以下のリンク先(当informationの別記事)をご覧ください。